【獣医師執筆】犬猫の慢性腎臓病について③(治療と予防)

病気について

犬猫の慢性腎臓病の治療と予防について詳しく解説します

  1. 慢性腎臓病の治療
  2. 慢性腎臓病の治療費
  3. 慢性腎臓病の予防法

1.慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の治療は、機能回復よりいかに腎臓の機能を悪化を緩やかにするかが大切になります。そして、その治療法はその子の状態、病気の重症度などによって変わります。

また、腎臓病になった原因がわかれば、その治療も並行して行います。

病気の重症度の評価法は、クレアチニンや尿蛋白、SDMAなどが用いられます。

ステージ1(正常~初期)

・水分不足は、腎臓病を悪化させるため常に綺麗な水を取れるようにする。

・腎臓に負担のかかる食事を避ける。最近では、早期腎不全用のフードがあるので獣医師と相談のうえ適宜利用する。

※予防目的で、早くに療法食の腎臓食を与える必要はありません。早すぎると逆に必要な栄養素が制限されすぎる場合があります。

・定期的な検査

ステージ2(初期~中期)

・腎臓用の療法食に変更する

・定期的な検査

ステージ3(中期~末期)

・状態に合わせて適宜点滴を行う

・ミネラル(リンなど)が異常が改善されない場合リンを下げるサプリなどを適宜与える

・嘔吐や食欲不振などの症状があれば症状に合わせた治療を積極的に行う

・貧血が起き始める場合、血を作るのに役立つエリスロポエチンという注射薬や鉄剤などの投与を行う

ステージ4(末期~)

食欲が完全になくなってしまう場合、上記の治療とともにご家族と相談のうえ鼻などからカテーテルを設置したり、入院下での静脈点滴、可能であれば透析などの検討を行います。

2.慢性腎臓病の治療費

腎臓病の治療は、多くの場合長期の治療となります。そのため、治療費も高額となる傾向があります。また、基本的に治る病気ではなく、悪化するにつれてより積極的な治療が必要となり、治療費もかかってきます。

当院では、大体の金額の目安は、下記のものになります。

  • ステージ1:無治療もしくは食餌療法、定期的な検査(3~6カ月に一回)で月当たり数千円
  • ステージ2:食餌療法、定期的検査(3~6カ月に一回)で月当たり数千円
  • ステージ3:食事療法、薬、サプリなど月当たり数千円~1万数千円
  • ステージ4:入院などが必要な場合数万円~

腎臓病の治療を積極的に行うと一時的に状態が良くなることが多いため、ご家族としても治療してあげたいという思いが強くなります。

そのため、動物病院では、ご家族の家計状態も獣医師と相談し、できるだけの治療を無理のない範囲で行います。また、点滴などは、皮膚の下に点滴薬を入れる皮下点滴という方法ならばご自宅でも行うことができますので、獣医師に教えてもらうといいでしょう。

3.慢性腎臓病の予防法

腎臓病の予防には、まず第一にミネラルの高い硬水や肉などの高たんぱく食などを継続的にあげることを避け、年齢に合わせてバランスの取れた総合栄養食を与えましょう。当然ながらぶどう、レーズンなどの腎臓への中毒物質は避けるようにしなければなりません。

また、腎臓病の治療において重要なのがやはり早期の発見と治療になります。そのため、定期的な検査がとても大切です。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

※このブログは、開示すべき利益相反はありません。病気の診断や治療法は、かかりつけの獣医師の判断を尊重してください。医療は、常に日進月歩です。今の医療がこの先も正しいとは限りません 。

コメント

タイトルとURLをコピーしました