【獣医の日常】Day13:ブリーダー不信と動物の愛護及び管理に関する法律

獣医の日常

昨日から飼い始めた二か月の犬が嘔吐して、食べないとのことでご家族がご来院

ふーむ、飼い始めのストレスかなー

と思いながら、診察開始。どうぞーと診てみると

ちっさい!(内心)と叫んでしまう、手のひらサイズのマメシバちゃんが登場しました。下を歩かせて様子をうかがってみると、全然動かずボーとした様子

ご家族もまだ飼い始めたばかりでこの子がどんな子かわからないとのこと

うーん、このくらいの子犬さんだと飛びまわるくらい元気な子がほとんどだけどなー

この子は生粋のおっとりさんなのか、動けないほど調子が悪いのかな?さて、どちらかな?

とりあえず、一般的な全体状態を確認。一回食欲の確認のため、ご飯を見せてみると一応食べてくれる。と思いきや、すぐに嘔吐されてしまった。

あーこれは、きつい…単純じゃないな

と、すぐに検査オールを提案して、実施。結果、重度低血糖、電解質(水の中の成分)異常確認。画像的な異常は、とりあえずなさそうだな

仮診断:急性の重度胃炎&子犬に多い食べないことからの低血糖

とし、一先ず糖分を与えて、入院指示。そして、この症状がいつからか念のためブリーダーに確認しようと思い、連絡先を伺って、連絡すると…

事情説明し、そちらではいかがでしたか?

「あーあの飼い主さんはね、こども連れて、やたら触ってたんだよ!

だから、そのせいだよ!

うちでは、全然問題なくて、すっごい元気で、食欲もあったから!

調子悪かったら売らないよ!

面倒見てた人は、今いないから詳しくはわからん!」

とのこと、

もうその言葉の端々から、うちは悪くありません!!!というオーラがものすごいすごい(ーー)

わーこれは、お話しても無駄だなーと思い、通話終了。

いや、私は別にそちらの責任を追及したいのではなく、単に病気の流れを知り、診断に必要な情報を得たいだけなんだけどなと思いました。

その後、入院治療が功を奏し、状態は改善し、無事帰宅。

と、その子に対しては一件落着ではありました。

だけど、これは私の中のブリーダー不信がさらに高まる一件でしたよ

というのも、ブリーダーという人たちを多くの獣医さんは苦手で、あまり関わりを積極的に持とうとしないです。

私もその一人

というのも、ブリーダーさんの多くは、あまり医療の知識を持ちません(中には熱心な方もいますが)。その割に自分の知識、ブリードに自信があることが多く、逆に獣医師を見下す人が多い印象です(確かに生まれたての子犬、子猫に関する知識や繁殖に関する知識は、乏しい獣医が多いです)。

しかし、そのブリーダーの知識は偏ったないし、間違っていることがあまりに多い。また、生き物というより売り物として見ているから、その扱いには疑問を持つことが多いです。

先天的な問題のある子から、子供を作る。

小さいと売れるから、なるべく小さくするのに、栄養不良な状態にする

生まれた月齢は、ごまかして、早く売る

売れた後のことは、決して責任を持たない

子供が作れなくなった母親は、捨てる。

私は多くの元繁殖犬を見てきたけど、健康に問題ない子なんて一匹もいない

歯はぼろぼろ、子宮の異常に、乳腺腫瘍は当たり前

ペットショップが非難されることは最近多いが、結局そのペットショップに犬を渡しているのはブリーダーです(多くの場合)。

今年の6月から動物愛護に関する法律が改正され、繁殖のルールが下記のように変わります。

・犬 : 雌の生涯出産回数は6回まで、交配時の年齢は6歳以下、ただし、7歳に達した時点で生涯出産回数が

             6回未満であることを証明できる場合は、交配時の年齢は7歳以下とする。

   ・猫 : 雌の交配時の年齢は6歳以下、ただし、7歳に達した時点で生涯出産回数が10回未満であることを証明できる

            場合は、交配時の年齢は7歳以下とする。

 ・犬又は猫を繁殖させる場合には、必要に応じて獣医師等による診療を受けさせ、又は助言を受けること。

 ・帝王切開を行う場合は、獣医師に行わせるとともに、出生証明書並びに母体の状態及び今後の繁殖の適否に関する

   診断書の交付を受け、5年間保存すること。

 ・犬又は猫を繁殖させる場合には、前述の健康診断、上記の帝王切開の診断その他の診断結果に従うとともに、

   繁殖に適さない犬又は猫の繁殖をさせないこと

https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045e/doubutsu-aigo-kanri-houritsu-kaisei-r030601sekou.html

もちろん、これでもまだ甘いと感じることもありますが、一歩前進ととらえます。

どうかこの法律を多くのブリーダーが従って、より良い生育がなされることを一獣医師として祈ります。

【獣医の日常】No14:ご無沙汰しております

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