【獣医の日常】Day17:拾われた猫(前編)

獣医の日常

この話は、フィクションです。ご了承ください。

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11月のある日

本来閑散期なのにありがたいことになんで?っていうくらい患者様がいらっしゃいます。

ダメ院長の自分は、のんびり仕事がしたい…という本音を押し殺しながら今日も院内を走ります。

そんな中、『先生、電話!猫拾ったって人から!道端に倒れている猫がいたんだけど連れて行っていいかって!』

とスタッフから声がかかりました…

倒れている野良猫…

と聞くと獣医としてはすぐ連れてきて!というワードと言いたくなりますが、院長としての頭がそれを止めます。

というのも世の中には、動物病院スタッフは皆犬猫が好きだから、動物病院に野良犬野良猫を連れていけば無料で診てもらえるうえ、そのまま預かってもらえ、さらには里親まで探してくれると思っている人が一定数います。

私は善意で動物を拾ったのだ!病院に連れて行ってあげてなんて優しい人間なんだ!お金を請求するなんて犬猫すきじゃないのか!?

って思ってしまうのです。

そんなやつがいるのかって?います!

というのも私自身が子供の頃に近所に脱毛して全身禿げ上がった野良猫を見つけ、近くの動物病院に駆け込んでなんとかしてくれ!って頼みにいったやつなのです。もちろん門前払いされたのですがその時の私の思考が上記みたいなもんでした。

もちろん獣医である以上病気の犬猫は、野良であろうがなかろうが治療を行うのが使命です。

しかし、それに時間とお金をかけていてはお金になりません。お金がなくては薬も機材も買えません。つまり、治療もできないし病院もつぶれてしまいます。

一匹くらいいいじゃんて?じゃ次に2匹目来たら断るの?同じ命なのに?と歯止めがきかなくなります。

そのため、スタッフに電話を代わってもらい、その電話の方とお話しました。

聞くと野良とはいえ以前から会社で面倒見ていた子で治してほしいということ、もし治ったら家で飼うことも考えているとのことでした。

『わかりました、では、すぐに連れてきてください!』

連れてこられた猫は、まさに虫の息、一見すると生きているか判別がつかない程度

すぐにスタッフに酸素室の準備とエマージェンシー処置の指示を飛ばします。

連れてきていただいた患者様に最低限の問診を行い、治療とともに診断を行います。年齢はそれほどいっていない若猫に思いましたが低体温、心拍血圧ともに弱い、全身は重度の皮膚炎で感染が疑われました。すぐに血管の確保、点滴治療を開始します。出てきた検査結果から敗血症という危険な状態におちいっていることがわかりました。

危ないな…

そして、患者様にその状態を告げ、いつ亡くなってもおかしくない状態で、治療にはすぐに入院が必要であり費用はかかることをお伝えし難しい治療が始まりました。

【獣医の日常】Day18:拾われた猫(後編)

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