【獣医の日常】Day22:友人の開業

獣医の日常

この話はフィクションです。ご了承ください

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2月も中頃となり、病院が一番落ち着く閑散期となりました。

当院は、忙しい時期の3割くらいは落ち着いています。

落ち着くと色々と普段は考えないことを考えます。この1,2月に私が検討、開始したことは、

・猫伝染性腹膜炎の正規品を用いた治療

・歯周病に用いる骨補填剤の検討

・総合臨床の認定試験の検討

と色々と新しい事へのチャレンジ意欲がわいています。

ずっと忙しい事はいい事だけどこのように時間の余裕があると新しい事をやる時間ができるのでこれはこれで大切な時間です。

春になると余裕なくなるからねー

ということで、本日は休診日、予定は2月に動物病院を開業した友人の激励です。

その友人は大学のころ外科の研究室で同じだった長い友人です。

閑散期の2月開業のためか内覧会から2週間たつが来院が少ないみたいで不安に駆られて何度となく電話やらLINEで彼の相談に乗っていました。

そこで、時間ができた本日の訪問となりました。

朝の仕事を終らせて、車で1時間の現地に向かいます。

まだ真新しい看板をくぐると、丸い顔に眼鏡、飾り気ない気さくさいいとこの学生のころから変わらない笑顔で友人が出迎えてくれました。

「ハルさん、久しぶり、ようこそ」

「久しぶり、元気かい?」

と手土産を手渡しました。

そして、友人の案内で綺麗な院内を見て回りました、真新しい院内に一部段ボールが散乱している状態を見ると自分が開業した数年前を思い出します。

ひとしきり、病院を見学した後昼休憩がてら近くの喫茶店に向かいました。

席につき、食事をとりながらも

「はるさん、俺大丈夫かな?全然人来ないのだけど…そんなもん?」

と、本日数回目の愚痴をこぼします

「そんなもん、そんなもん。最初の頃なんて人も来ないし、来てもそのお金があっという間に請求書で流れていくからまさしく自転車操業だったよ。しかも、勤務医のころには見たことないお金が請求されるからね。とても不安よね」

まー確かに彼の不安は、私とは比較にならない。なんといったって、私が開業した時私は独身でマンション一人暮らしの身分だったけど、彼には現在奥さんがいてまだまだ小さな子供3人と持ち家ととてもたくさんのもの背ってらっしゃいます。背負うものが大きいと恐怖も多かろうな…と思いながらも彼の不安解消に勤めます。

動物病院が開けば儲かったのは過去の話で、今は弱肉強食の戦国時代。彼が病院を建てた周りにも評判のいい個人病院から、獣医を何人も雇っている企業病院まで様々あります。病院が増えてもその周囲に患者さんが増えるわけではないので、新規の病院は周りからなんとか患者さんを奪っていかなければいけません。私自身も半径1kmに何軒も病院があるエリアに建てたので、開業当初は全然人がきませんでした。

動物を飼っている方が新しい病院に来る理由って

  • 他の病院より近くて、特に継続して診てもらっている疾患がない子
  • 今かかっている病院に不満がある人
  • まだかかっている病院のない新しく引っ越した人

くらいなものですからね。今はネットの時代だからそちらの広告を頑張るのはもちろんですが、やっぱり大切なのは口コミでだいたいは上記の人に来てもらって周りに評判を広めてもらわないといけません。

そんな困難な状況でも開業するのは、私のようにもともと開業するのが夢だった場合と勤務医じゃやっていけなくなった場合です。だいぶ以前よりも勤務医の給料は良くなったとはいえ、頭打ちになりますし年をとっても雇ってもらい続けられるかわかりません。彼は後者のタイプで背負うものが大きくなってギャンブルに打って出た形になりました。

「ありがとう、はるさん。楽になったよ」

「うむ、それは結構。身体大切にな!春が来ればもうちょっとは人来るから大丈夫よ。困ったら呼びな」

と別れを言い、帰路につきました。

獣医の世界は狭く、横のつながりはとても大切というのもありますが、何よりともにこの戦国時代を戦うのに励ましあえる友はとても大切。

また定期的に連絡してやるか…と思いながら、自分自身もまた今年も春の繁忙期頑張ろうと思った1日でした。

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