先日の話
20歳の猫ちゃんが肉球に爪が刺さっているといらっしゃいました。
そちらの方は、幸い肉球には爪が当たっている程度で大きな外傷なく、爪切りして終わりになりました。
しかし、一緒に行った身体検査で口の中に大きなできものができていることが見つかりました。
簡易の検査では、それが癌のような悪いものか、それとも様子を見れる良性のものかの判断が付きませんでした。
そのため、次に必要となるのが組織生検といって、そのできものを摘出して検査する方法が必要です。
しかし、ここで問題となるのが麻酔です。
麻酔というのは、リスクが伴います。リスクと一言にいっても、多様です。
その中には、最悪死亡するリスクも含まれます。
猫で20歳、人で言うと100歳近い年齢です。
しかし、おそらく見た目の所見、年齢などを踏まえると悪性の恐れも十分にある。
では、この子にとってベストの流れは果たしてなんだろうか
①麻酔をかけて、摘出。検査に出して、これが何かと調べて、癌であれば、追加の治療を行うなど積極的に治療する。
この方法のメリット
→これが悪性の腫瘍で、これを取り、治療をすることで病気がなくなり、寿命が延びるかもしれない。
→もし取り切れずに残ってしまっても、病名を知ることで、今後の予後について知ることができる
デメリット
→麻酔で体調を崩すかもしれない、最悪術中に亡くなる可能性も0ではない。
→取っても、悪性のものであればすでに見えないレベルで転移していたら寿命も延びないかもしれない
→実は良性でとっても取らなくてもいいもので、負担をかけるだけで終わるかもしれない
②麻酔をかけずに、このまま様子を見る。
メリット
→麻酔のリスクを回避することができる。
→悪性のものでなければ、このできものでは亡くならないで天寿をまっとうできるかもしれない
デメリット
→放っておいて大きくなれば、とることはできない。大きくなっていけば本人は最悪ご飯を食べれなくなるうえ、痛い思いをしながらどんどん衰弱し、死亡するかもしれない
→病名がわからなければご家族は、今後もできものの存在について悩み続けることになる。
今回ご家族とのご相談の上、経過を見ることを選びました。
この結論がはたして、どうなるかはわかりません。
獣医師としては、①を選びたいところです。病気の種類がわからず、今後どうなるかも説明ができない。これは、獣医師としては治療が難しくなるためです。
しかし、最後に選ぶのはご家族です。どうかこの子が苦しまず、天寿を全うできるよう祈りながらも、今後起きることに対して、ご家族と寄り添って進んでいきます。
このことからも言えるように
獣医師もいくら勉強しても、未来が見えるようになるわけではありません。
確率の話は、研究によって出せても実際麻酔のリスクが1~2パーセントだとしてもその子がそれに入ってしまうこともあります。
最後はともに寄り添ってきたご家族の思いが大切です。しかし、いざその日が来てすぐに決断しないといけないときもあります。これを読んでくださったご家族は、もし自分ならと考えてみてください
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