【獣医師執筆】犬猫の慢性腎臓病について②(診断)

病気について

慢性の腎臓病の診断法について解説します

  1. 血液検査
  2. 尿検査
  3. 画像検査
  4. 血圧測定

1.血液検査

まず、よく診断に用いられる項目が血中尿素窒素とクレアチニンです。

①尿素窒素(BUN)

食べたタンパク質が身体で代謝された後の残りカス。腎臓が悪くなると外に出せずに溜まってくるため、腎不全で数値が上がる。食後でも上がる。

②クレアチニン

身体についている筋肉が代謝された後の残りカス。腎臓が悪くなると外に出せず溜まってくるため、腎不全で数値が上がる。そのため、筋肉の量によってその子その子でもとの数値が異なる。筋肉量が少ない子だと基準値が低め。食事に影響されないので食事のタイミングに関わらず、腎不全の程度がわかりやすい

これらの項目は、多くの動物病院の血液検査ですぐに測定することができます。しかし、これらの項目が上がってくるときには、腎臓の機能が残り25%程度になってしまっています。

他にも調べておきたい血液検査の項目としては、

③ミネラル(リン、カルシウム)

腎臓はミネラルであるリンやカルシウムを調節する能力があります。そのため、腎不全となるとその調節機能が壊れてしまい、高リンや高カルシウムになってきます。そして、リンとカルシウムが上がると、腎臓にダメージを与えるため注意が必要。

④赤血球

腎臓は、血を作るのに関わっており、腎不全が進行すると徐々に貧血が進んでしまいます。

⑤電解質

腎臓は、電解質という水の成分のバランスを保つ働きをしています。そのため、腎不全となるとその調節機能が壊れてしまい、高カリウム血症や高ナトリウム結晶などになってしまいます。

⑥SDMA

SDMAは、対称性ジメチルアルギニンの略称です。この血液検査項目は、ここ数年でよく使われるようになった検査項目です。この検査によって、腎臓が40%程度悪くなった時点でわかるようになりました。クレアチニンの場合、75%程度が悪くなってからわかるのに比べるととても早く腎臓の悪化がわかります。

2.尿検査

尿は濃さやその量から腎不全の状態を把握する上でとても重要です。特に注意する項目として尿比重、尿量、尿たんぱく、尿沈査などがあります。

①尿比重

腎臓は、尿の濃さを調節する能力があります。そのため、腎不全が進行し、その能力が損なわれると、薄い尿が大量に出るようになってしまいます。尿比重とは、尿の濃さを表す数値でその値が基準より下がると尿が薄いと評価されます。

②尿量

腎臓が悪くなると薄い尿が大量に出るようになります。そのため、症状として、ご家族は尿量の増加に気付くかもしれません。しかし、腎臓がより悪化し、腎臓が尿を作ることができなくなると徐々に尿量は減っていき(乏尿)、最終的に作れなくなっていきます(無尿)。

③尿蛋白

尿の中にはタンパク質が微量に含まれています。しかし、腎臓が悪くなるとその量が増えていくことがあります。そのため、尿のタンパク質の量を測定することによって、腎臓の悪さの程度を推定することができます

3.画像検査

①レントゲン検査

腎臓の検査において、レントゲンを撮ることの意義は、腎から尿の出どころまでの間に石がないかや腎臓の大きさの測定になります。ときに急に腎不全になってしまった子の検査でレントゲンを撮ることで、腎臓や尿の出どころまでの間に石が見つかり、その石を取り除くことで腎臓を助けることができるかもしれません。腎臓の石にはいくつかの種類があり、中にはレントゲンに映らない場合もあるので超音波検査もともに行う必要があります。

②超音波検査

超音波検査を行うことで腎臓の形や大きさ、血の流れを調べることができます。時に腎臓の悪化の原因が結石であったり、腫瘍であったりする場合があり、それを発見することで治療に役立つときがあります。

4.血圧測定

腎臓は血圧を調節する能力があります。そのため、腎不全が進行すると高血圧になっていきます。高血圧は、腎臓にも悪影響ですが、目に網膜剥離を起こしたりなどの全身的な悪影響にもなります。

【獣医師執筆】犬猫の慢性腎臓病について③(治療と予防)

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※このブログは、開示すべき利益相反はありません。病気の診断や治療法は、かかりつけの獣医師の判断を尊重してください。医療は、常に日進月歩です。今の医療がこの先も正しいとは限りません 。

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