【獣医師実体験】老犬の介護:愛犬との最後を良い思い出にするため

ペットとの生活知識

うちの子…もう私のことがわからなくなってしまったみたい…

夜泣きもひどくてご近所にも苦情を言われてしまったわ…

辛い…もう私にしてあげられることはないのかしら…

辛いですね、わかります。

でも、今この時間を『今まで一緒にいてくれたこと、そして、長く生きてくれたことを感謝する時間』と思って、その子が快適に過ごせるように一緒に頑張りましょう。

介護は、認知症だけでなく年をとった子にはみなにおとずれる時間です。でも、この時間は家族だけで乗り越えるには少し辛い時間です。私自身も愛犬を17歳で亡くしましたが、晩年は老いる可愛い子との時間を辛いと感じてしまう時もありました。介護をしていた当時、私はまだ獣医師になりたてで十分な知識を持っておらず苦労をした記憶があります。

それを踏まえて、今まさにつらい思いをしているご家族に向けて、穏やかな気持ちで最後の日を迎えられるよういくつかの方法をお伝えします。

私が好きな言葉に【困難は、分割せよ】という言葉があります。問題を明確にし、一つずつ解決していきましょう。

  1. 徘徊と寝たきり
  2. 食事のあげ方
  3. 排便と排尿
  4. 見守りの仕方と周囲のヘルプ

1.徘徊と寝たきり

問題:徘徊

認知症が進んだワンちゃんでは、意図もなくウロウロと歩いたり、くるくると同じ場所を旋回する運動が見られます。

この行動の困ったことは、時に徘徊によって色々なところに頭を突っ込んでしまい、目を怪我したり、時に転倒して頭を打ったり、段差に落ちてしまったりしてしまうこともあります。そうして、ご家族が見てられないときに思わぬ怪我をさせてしまうかもしれません。うちの子も階段から落ちてしまったことがあり、幸い怪我はしなかったですが本当に肝を冷やしました。以前なら問題のない段差や環境が老犬を見るうえではとても危ない場所になりうることを理解しましょう。

そこで下記の対策を行います。

対策①柵・衝突防止シート

まだ歩ける子では、段差、階段などにはすべて柵を設置しましょう。うちの子はまだ大丈夫と思っても一回目の落下で怪我をします。早めに対策しましょう。また、ぶつけて怪我をしないように柔らかい素材のもの、もしくは固いものでもタオルや衝突防止シートなどで角に当たらないように工夫しましょう。

対策②サークル

転倒、頭を突っ込んでしまう子の場合、基本的に見てあげられない時間は、安全なサークルの中に入れてあげましょう。できるだけ円形のものを選ぶことで角にぶつかることを避けることができるのでオススメです。

対策③転倒してしまう子…フッドパット、トーグリップ、滑り止めマット

足が滑ってしまう子の転倒対策グッズがあります。フッドパットは比較的軽度な子には使いやすいですが誤って誤食しないように気をつけましょう。また、足裏の毛を短く刈るようにしましょう。

トウグリップは爪につける転倒防止グッズですが、サイズ感を合わせることが難しく最初は動物病院などでサンプルを試せると思うので扱えるか動物病院に問い合わせてみましょう。

犬のためのバズビー博士のつま先グリップ|犬が滑るのを止めろ (toegrips.com)https://toegrips.com/

問題:寝たきり

徘徊ができなくなったり、立つ筋力が衰えてくると徐々に寝ている時間が増え、寝たきりになっていきます。寝たきりになってしまった場合、人と同様に床ずれができる場合があります。床ずれは、骨などで身体が出っ張っている部位(頬、肩、ひじ、腰など)に体重が持続的にかかることで血行不良がおこること、また動くことで擦れることで、その部位に傷ができていきます。床ずれは一度起こるとそれを治そうとするのはなかなか大変です。まずは、しっかり対策して、発生を予防することが大切になります。

対策①定期的な寝返り

数時間ごとに身体の向きを変えてあげましょう。どれくらいの時間ごとかはその子その子です。また、使う寝床のマットの質によっては回数を減らしてあげることもできます。適宜獣医師に診察してもらいながら、床ずれの傾向が見られる場合などには回数を増やすなどの対策を行いましょう。

対策②床ずれ防止用マット

下記のようなマットを使うことで皮膚にかかる圧を分散し、予防しましょう。サイズは、寝返りや寝たきりの子でも動くことが多いため、大きめをチョイスしましょう。

2.食事のあげ方

問題:食べづらそう、気づかない、食べれない

高齢の子では、背骨の痛みや関節が動きづらくなる子が多く、そのため、通常のお皿だと首を下に下げることが難しくなり、食べるのを途中でやめてしまったりする場合があります。また高齢や認知症の子だと感覚機能が低下しており、ご飯を目の前においても気づきずらいことがあります。また、介護となった場合、自力での食事が難しくなってきます。それぞれに合わせた対策を行っていきましょう。

対策①食べづらい

下記のようなグッズでご飯皿やお水皿を高くしてあげましょう。すると頸への負担が軽くなり食べやすくなります。

対策②気づかない

約40度程度にご飯を温めましょう。ドライがメインの場合は少しふやかしてあげたうえで温めると臭いがたち、食欲が増すとされます。また、口元、鼻先に近づけてあげることで気づけるようにサポートします。食べ物に気づけない子の場合、食べこぼしが発生しやすく、十分な量を食べることができていない場合もあるので、食べこぼしはお皿に戻したり、口に運んであげたりしましょう。

対策③意識はあるが食べれない

ご飯を自ら食べることができなくなった場合は、まず口に入れれば食べれる場合は、注射器などを用いて、口の中にご飯を入れてあげましょう。注射器を使う時は犬歯という大きな歯の後ろに注射器の先が当たるようにするとあげやすいです。

ご飯としては、ドライフードをふやかしてドロドロにしたものやよく裏ごしした缶詰、最近ではロイヤルカナンさんなどから液体のフードが売っていますので試してみましょう。

あげる際は意識状態を確認し、ちゃんと起きている状態で与えるようにしてください。あげ始める前に少量の水でちゃんと飲み込めるかを確認しましょう。そして、頭を少し上げで食べたものが胃まで届くようにしてください。

時にご飯を与えるときに謝って誤嚥を起こす場合があります。呼吸のスピードが速かったり、咳のような症状が出た場合速やかに病院にいってください。また、さらに意識状態がまばらになったり、意識がない時間が増えるようならば鼻からのカテーテルなどを検討しましょう。十分なカロリーを与えることで弱っていくことを防げますし、訴えることができなくてもお腹はへるのでご飯はちゃんと与えるようにしましょう。

3.排便と排尿

問題:糞便と尿による身体の汚れ

認知症などによって今までできていた排便や排尿が正しいところでできなくなったり、漏れるようになってしまうとご家族としても困ってしまうことが多々あると思います。また、寝たきりの場合は便や尿が身体につくと不衛生になり、痒みがでたり、膀胱炎などの感染が起こることもあるので、状態に合わせた対処をしていきましょう。

対策①トイレの範囲を広くする、数を増やす

まだ歩ける状態であれば、まずはトイレの失敗を減らすために、トイレの広さや数を増やしましょう。トイレは、なるべくその子がくつろぐ場所の近くに置いてあげると失敗が減るのでいいでしょう。また、寝ているところで尿漏れを起こす場合もあるのでその場所に吸水性の高いシートを下にひき、身体についてしまった場合、すみやかにペット用の除菌シートやシャンプーなどで取り除き清潔に保ちましょう。

対策②オムツの着用、ペットシーツ

オムツは便利で、排便排尿がコントロールできない子につけたくなると思います。しかし、オムツをつける際は可能な限り糞尿をしたらこまめに交換するようにしてください。というのは、つけっぱなしにしてしまうご家庭が多く、そうするとその部位に糞尿が長時間と付着してしまい、皮膚炎を発生させてしまうケースが多く見られます。

そのため、こまめな交換と糞尿が付いてしまった場合に洗浄をしっかり行うようにしましょう。また、同様にペットシーツを使用する場合も身体が汚れてしまう場合が多いため、見つけ次第交換、洗浄を心掛けてください。また、赤みがひどい、広がる、臭う場合は、速やかに病院への受診をお願い致します。

4.見守りの仕方と周囲のヘルプ

最後に介護は、一人で完璧に行うことはおそらく不可能です。どうしても、身体は汚れるし、倒れるし、ご飯を必要量すべてあげることはできません。これは、私自身獣医師として我が子と可愛がったチロ(享年17歳)に対してもできませんでした。それでも、その日その日100点でなくていいです、大切なのはあきらめずに最後まで続けることです。一番良くないのは、ご家族の気持ちがその子から離れてしまうことです。人間いくら可愛いわが子と思っても気持ちが続かないことなんて当たり前におきます。

だから、疲れたと思ったら休む、動物病院やヘルパーさんなどに適宜相談し、決まった休みを設けるなどしてください。下記のような見守りカメラなどを使えば、離れていても見守ることができる商品が最近ではいろいろと手に入ります。

あらためて、

今まで一緒にいてくれたことを、そして、長く生きてくれたことを感謝する時間と思って、その子が快適に過ごせるようしていきましょう !

でも、無理なく手を抜いて、楽しみながら過ごしてください!それが我が子のためになります。ご家族が辛いとその子もつらいからね!笑って!

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