【獣医師執筆】動物病院のオススメの選び方

ペットとの生活知識

うちの子、動物病院に初めて連れていくのだけれど,どこがいいかしら?

という方が多いので病院の中の人が、動物病院の選び方のオススメを解説します

  1. 動物病院の種類
  2. 動物病院を選ぶ基準
  3. 動物病院を選んだ後の注意点

1.動物病院の種類

0.5次診療施設、1次診療施設、1.5次診療施設、2次診療施設

と最近では自称を含め、分けられてます。それぞれの特徴を独断とやや偏見を交えて説明すると、

①0.5次診療施設

治療の設備を持たないこともあり、予防や簡単な相談しかしないが多くの場合それらは、安価で提供される。

②1次診療施設

予防や日常の病気など幅広く対応する。しかし、多くの場合獣医が一人のことが多く、病院によってレベルの差や対応の幅が異なる。費用は病院にもよって差がある。

③1.5次診療施設

複数人の獣医師と多くの医療機器を備える病院、それぞれの獣医のレベルは1次診療と大きな差はない場合があるがマンパワーによって解決できる幅が広く、一人の獣医と相性が合わなくても別の獣医師にお願いできる。しかし、院長を除き、獣医の入れ替わりは激しいことが多い。費用は1次の施設よりは割高となる。

④2次診療施設

多くの科に分かれており、それぞれの専門分野の獣医師がいる病院。1次診療で手が出せない、もしくはわからない病気の診察が可能。しかし、費用はほとんどの場合高額。

0.5と1.5は最近できてきた造語で、もともとは、1次診療か2次診療かに分かれており、1次でほとんどの場合治療にかかり、1次の先生がわからない、できないことは2次にまわすことが一般的です。

なかには、自分にはわからない病気、できない治療でも、2次などの他の施設に絶対紹介しないで診ようとする病院もありますが、オススメしません。いざという時に適切に紹介してくれる病院を選びましょう。

ということで、まず近くの1次診療施設をかかりつけにすることがお勧めです。   

2.動物病院を選ぶ基準

①距離

かかりつけ医として探すのであれば、まず一番はお自宅からの距離の近さが重要です。せめて徒歩の場合は半径500m以内、もしくは車なら10分程度が望ましいでしょう。

というのは、いざという時に命に関わること、連続して通うことも考えなければならないためです。

もちろん、当院にも遠くから来てくださっている患者様もいらっしゃいます。どうしてうちに来たの?来るまでにたぶん10件以上動物病院あったよね?と思うくらいに遠くからいらっしゃいます。もちろん評判を聞いてと言われると個人的には嬉しいと思いますし、しっかり診ないとと気が引き締まりますが…(いつも引き締めてますよ)

そう思いながらもやはりいざという時のためにもう一つ近くの病院に当てはつけといたほうがいいとはお話してしまいます。

例えば、その子の心臓が悪くなったり、発作を起こしたりと緊急性の高い状態になったとき、うちに来るまでの間に亡くなってしまう可能性があるかもしれませんし、状態が悪くしばらく毎日通ってくださいとなったときは、その提案もしづらくなり、結果として治療がうまくいかなくなる可能性もあるためです。もしそのようなときに近くの病院を知っておけば、いざという時の対応に役立つと思います。

そのため、まずは規模や評判は置いといて、お近くの病院に日常ケアとして行ってみましょう

②評判

病院選びに口コミサイトを利用される方も多いと思いますがこれは、あまりお勧めしません。口コミサイトは、沢山ありますが個人的な見解ですが正直あまりあてになりません。特に点数評価はもう断言しちゃうくらいに当てになりません。私個人は、もう主観と誤解と嫌がらせが飛び交う混沌な世界だと思ってます(私見です)。

獣医のコミュニティサイトでは、自虐的な大喜利がたくさんあり

この病院にはいったことない★1

いったのにやってなかった★1

とてもよかったです★1

病院の前で事故が起きてました★1

など冗談みたいな口コミがされてる病院もあり、不当に評価が下げられていたり、

やたら匿名の★5がついてたりすると、口コミ業者に★5を頼んでいたりするケースもあるとか…獣医スタッフが直接患者さんにいい口コミを暗にうながしてたりとか…

また、よく病院にメールや電話で怪しい会社からいくらで悪い口コミ消しますよという営業がかかってくることもあります。

人が口コミをするのは、よっぽどいいことがあったか、よっぽど悪いことがないとしないことが多いので(口コミが趣味の人もいますが)

どうしても意見が二極化しがちです。特に人間は悪いことのほうが口コミしやすいです。なのでいい事ばかり書かれているところはむしろ怪しいとすら思ってしまいます(二回目ですが私見です)

だからって、ワンちゃんの場合散歩をしているかたに近くの病院の評判を聞くこともできますが、なかなか勇気がいりますよね

また、猫だとそれも難しいですし…

ですので、口コミサイトとかの情報は、あくまで病院選びの補助程度にとどめておくといいでしょう。また、次に書きますが最後は相性です。どんな人、病院でも万人に好かれることはありません。★の数より自分の目を信じましょう。

③院内の清潔さ、綺麗さ

まずは、意を決して近くの病院にいってもらい、着目してほしいのが、病院の待合や診察室の清潔さや雰囲気です。

しかし、事細かに床や壁の汚れを探すのではなく、待合の椅子に座ってなんとなくいいなと思ったら、それでオッケーです。動物病院はどうしても汚れやすく、ご自宅のように綺麗を保つのはかなりの努力が必要です。換毛期のワンちゃんが来たらあっという間に床は毛まみれ、皮膚の悪いワンちゃんが来たらあっという間にフケまみれになります。ウンチおしっこをしてしまう子もいます。

そのため、いくら朝晩や診療の合間にきれいにしても汚れてしまうタイミングがあります。その時初めて来院されて、ここは汚い!と思っていかなくなるのは、どうにももったいないと感じてしまいます(毎回汚れてたらダメですが…)。

なんとなくの雰囲気で不快に思わず、居心地がいいと思えれば、そこには病院からご家族への十分な配慮がなされていると思います。

④待ち時間

病院の待ち時間は、ご家族にとって、特に忙しい人にとっては病院選びに気になるところだと思います。

けれど、人気の病院であればあるほど患者さんが多く、インフォームド(患者さんへの説明)がしっかりしており、一人一人にかける時間は長くなりがちです。最近では予約制の病院も増えてきていますが、歯医者や美容室のようにいかないのが動物病院です。どうしても予定外の病気の発見や急変のようなイレギュラーが起こり、時間通りにこなすことは困難です(私には予約制は無理です)。

そのため、待ち時間が短いないし、時間通りに診てくれる病院=いい病院と判断はしないほうがいいでしょう。もちろん中には、ものすごく診療が速く、適切で、インフォームドもわかりやすく、すごい数の患者さんを診れる先生がいるかもしれませんが、今のところ私はお会いしたことはないです。

⑤信頼できるか、できそうか

私が病院選びで最も大切だと思うのが、獣医師やスタッフとご家族の信頼関係です。なぜならば、いかに素晴らしい治療をしても、いずれはその子がなくなることは、生きものである以上避けられません。

そして、そのときまでに信頼関係が構築できていないと、治療の甲斐なくなくってしまったときに治療が間違っていなくても病院に対し不満や、怒りを覚えてしまうことがとても多いです。また、亡くならないまでも日々の治療でうまくいかないこともありますし、処置中に偶発的な事故が起きたときでも病院の責任と思うでしょう。

ご家族の信頼を得るのは、病院の仕事ですが、ご家族はまず日々のケアを通して、獣医師やスタッフと話し、信頼関係を持とうとしてください。そして、それが難しいと思ったら、別の病院を探しましょう。

⑥費用

費用についても長く通ううえでは、重要な要素です。

費用の高さ=レベルの高い病院ではないですが、やはり、スタッフ数が多く、医療機器が充実した施設は費用が高い傾向にあります。対して、費用が安い病院は、患者さんの数は多くなりますが、その分一人に対する時間が短く、診療の質は下がる傾向にあります。安くてもしっかり診てくれる穴場もあると思いますが…

業界全体としては、動物病院にかかる費用は年々上がっている傾向にあります。というのは、獣医療の発展に伴って様々な検査、治療ができるようになってきたことが一因です。

考えてみてください、人の病院にいって、すぐに採血してもらい、すぐに結果が出ますか?

ふつう出ません。

それだけでなく、レントゲン、超音波、眼科検査機、歯科治療機などもほとんどの動物病院で今は置いてありますし、大きなところだとCTやMRIまで完備しています。また、人と同じような心臓の手術、脳外科、整形外科など多くの病気が人並みに治せるようになってきました。これらは動物たちの健康にとってとても良い事ですが、それらの経費は当然ご家族に費用として請求されます。

他にも、都内だと動物病院の増加に伴い、患者さんの奪い合いが起きており、一人当たりの診療費をあげなければ病院の経営が落ちていってしまいます。さらに、最近ではインターネットや量販店で治療に用いる療法食やノミダニの薬など様々なものが売られており、動物病院で獣医師が説明をしたものがそちらで買われてしまうため、それらも動物病院の経営に響いています。

そのため、ご家族は病院を選ぶ際には、電話、HPなどを参照にその病院にかかる費用を先に調べておきましょう。そして、ご家族が出せる範囲で納得できる検査治療を受けるようにしましょう。

また、ペット保険なども有効に活用するといいでしょう。

⑦再診時の対応

最後に個人的な病院選びの一つのコツとしては、再度病院に行った際に前回話をした内容を獣医、スタッフがどれくらい覚えていてくれるかというのはいい指標かなと思っています。

いい獣医師、スタッフは、ご家族の話をよく聞きます。なぜならば、そこには治療をするうえで必要な情報が含まれているためです。

逆にしっかりと話を聞かず、ルーチンで仕事をこなすものは、おそらく細かくは覚えていないでしょう。そこで、診察の際に少し前回の話を混ぜて、相手のリアクションを見てみるのは一つのアイデアかもしれません。

以上7つ挙げてみました。地域によっては、病院を選ぶほどないところもあるとは思いますが、もし選ぶ際には参考にしてみてください。

3.動物病院を選んだ後の注意点

最後に動物病院の中の人として、声を大にしてお伝えしたいことは、

通う病院は、基本的には一つにしておいてください!

ということです。というのは。最近病院が増えてきて、

「これはここが安いからここ!」

「これはあそこの先生が評判いいからあっち!」

みたいに病院をいくつも行ったり来たりしている患者さんが増えています。

買い物ならばそれでいいかもしれませんが、正直獣医さんとしては、これをドクターショッピングと呼びあんまり嬉しくないものです。

そのほうがお得だろ、ワクチンなんてどこでやっても同じなんだから安いとこでやったほうがいいだろ!

と思われるかもしれませんが、ほとんどの獣医さんは、ワクチンを一つ打つだけでも、しっかりお話を聞き、ご家族が異常と思ってないことでもその中に病気をみつけるきっかけを読み取り、身体検査を行う際に病気が見つけるかもしれません。

そして何よりその子の顔の表情、雰囲気などなかなか言葉では表現が難しいその子の顔色を診ています。

年に一回、二回と来てもらうことでその子の顔色を覚えてくと、いざ何かおかしいときに適切な診断を下すことができる場合があります。

人と違い、自らどこが悪いか伝えてくれないペットだからこそ、なんとなくな雰囲気や顔色から読み取ることは時に病気の診断に役に立ちます。

そのためにも、一つのかかりつけに定めていただいた方がいざという時にもつのでいくらか役に立つので費用に差が出ても、同じところでやることをお勧めします。

また、獣医師はご家族も診ています。この人は、ペットとの距離感はどうか、遠いか近いか?楽観的なのか、心配性なのか?しっかり見ているご家庭なのか、放置しているのか?費用に不安を持つ人なのか、検査をすることで安心してもらえる人なのか?仕事は忙しいのか、ご家庭にいるのか?…などなど様々なことを気にします。

それらの情報は、検査の提案や、治療に大いに役立ちます。ペットとの距離間があれば情報の正確性が不確かですし、それなら、しっかり再度検査が必要だと考えますし。仕事が忙しい人であれば、通院より入院を勧めます。費用が厳しいならばその中で最善を尽くします。

これらの情報も、一回で得ることは難しく、やはり定期的な受診で話を深めていかないといけません。

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