【獣医師執筆】膵炎とブレンダについて②

病気について

膵炎て恐いのねー膵炎になったらどうすればいいの?

という方に

膵炎になった場合の病院での対処法とブレンダについてお話します

  1. 膵炎の診断法
  2. 膵炎の治療
  3. 新しい薬「ブレンダ」について

1.膵炎の診断法

動物病院では、どのように膵炎を診断するかというと下記のようなものがあります。

①問診・触診

まず、ご家族からお話を伺い、吐いたり下痢したりの症状の有無を聞きます。また、そのうえで、そういった症状が起こる前に何かイベント(いつも与えてないご飯や盗み食い)などの確認をします。そして、身体検査を行い、腹痛などの有無を触診で確認します。

②血液検査

血液検査にて、膵特異的リパーゼという項目を検査することで、膵炎の有無を調べることができます。しかし、膵炎の血液検査は症状が出て、すぐに数値が上がらないこともあるので、状態によっては再検査が必要なことがあります。また、膵炎でも数値が上がらない場合もあるため、数値が上がってなくても膵炎を否定できません(特に猫の慢性膵炎の場合)

また、膵炎の時にCRPという急性炎症の数値を計る検査を行うことで、膵炎の治療効果についてできるため、いっしょに調べることが多いです。

時に非常に重篤な膵炎の場合は、DICという危険な状態に陥ってしまう場合もあるため、その診断のため凝固系などの検査を行う場合もあります。

③画像検査

超音波検査を行うことで膵臓の変化を見ることができる場合もあります。ただし、画像の変化が常に起こる(確認できる)わけではないので、参考にします。その他、膵臓以外にも症状の原因になるものがないかを確認します。膵炎によって、腸管にも炎症の所見がみえる場合もあります。

④組織検査

膵炎の診断で用いられることはあまりありませんが、重篤な膵炎の場合に膵臓に細菌の塊(膿瘍)などができる場合があり、その細菌を調べるために針を刺す検査を行う場合はあります。

2.膵炎の治療法

膵炎の治療は基本的には、対症療法(症状に合わせた治療)となります。膵炎の場合、多くが嘔吐、下痢とそれに伴う脱水、食欲不振、腹痛がおこるためそれを緩和、改善することに主眼がおかれます。

軽度なものであれば、2.3日の対症療法で良くなる場合が多いですが、重篤な場合なかなか改善せず、長期の入院となる場合もあります。また、壊死性膵炎といって、膵臓が重篤に障害されてしまった場合、DICという危険な状態に陥ってしまいます。その場合の治療法は、あまり多くなく輸血などが検討されますが、改善が見られない場合もあります。

また、膵炎が慢性化してしまい、繰り返し膵炎となってしまう子もいます。そういう子の場合は、膵炎の原因が高脂肪なフードの場合もあるため、低脂肪なフードへの変更や、食欲不振などの症状が出た場合にすぐに積極的な治療を行い、悪化を防ぐなどの対処を行います。

3.新しい薬「ブレンダ」について

ブレンダは、石原産業という会社が作った薬で、2018年に発売された日本唯一の犬の膵炎の治療剤として認可されている薬です。作った会社は石原産業ですが、売っている卸さんによって「ブレンダ」と「ブレンダZ」と名称が異なります。ややこしいですが、中身は同じ?薬です。

ブレンダは、 フザプラジブナトリウム水和物 というものが主成分で、下記抜粋HPより

フザプラジブナトリウム水和物は、炎症性細胞の表面に発現する接着分子(インテグリン)の活

性化を阻害することで、炎症性細胞の血管内皮細胞への接着並びに組織浸潤を阻害して膵炎の増

悪化を抑えることを特徴としています。

HP:20180928(最終・HP掲載用に修正)承認取得プレスリリース原稿_HS.pdf (iskweb.co.jp)

わかりやすく言えば、消炎剤です。

ブレンダは犬の急性膵炎の薬として認可されたものですが、別に膵臓に特異的に働くというものではないです。そのため、現在では、膵炎以外の炎症疾患にも効くのでは?と積極的な獣医さんによって様々な炎症疾患に使われ始めています。その場合はエビデンスは未知で、自己責任です。

で、大切なのが…

んで、膵炎にどんくらい効くの?

ということですが、もちろん認可されているくらいなので、効果があると言っていいでしょう。しかし、個人的な意見としては、今のところ「これは、ブレンダのおかげ!よく効くね!」

ってなったことはないです。何よりほとんどの膵炎が上記の対症療法で良くなるので、高価なこの新薬を使おう(この薬は、薬価がとても高い)ってなるケースがそもそも自分は少ないです。

で、重篤な子に使うとなると今のところは、この薬を使おうと私が思って(ご家族も希望して)、うまくいった子はいないのが現状です。

ですが、新薬にすべからく言えることは、新薬が出て、多くの獣医師ないし、医師がその薬を使い、効くものは業界に長く残り、効かないものはひっそりと淘汰されていくものです。

また、当初はこの病気に使ってたけど、実はこっちの治療に使えんじゃない?とまったく別の着地地点に行く薬もあります。

今のところ私手持ちの治療薬の本には、「今後に期待」という薬になります。

私も今後に期待です。

2024年1月17日

ブレンダに関する新たな論文について個人的な感想を書きました⇒【獣医師執筆】膵炎とブレンダについて③

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